電通が労働環境の改善をするのは否定・批判されることなのか?

電通が労働環境の改善をするのは否定・批判されることか?

2016年末に高橋まつり氏の過労による自殺が大きな話題となった株式会社電通(以下、電通)。

長時間労働是正を中心とした働き方改革を社会に促す契機となったこともあり、今尚記憶に新しい人も多いだろう。

その電通が、2018年4月16日に「当社が推進する労働環境改革の新たな施策について」と題して、新たな労働環境改革(いわゆる働き方改革)の施策を紹介した。

今回は、この件について個人的にふと感じたことをつらつら書こうと思う。

目次





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今だからこそ電通で起きた過労による自殺事件を振り返ろう

 

今回の内容には関係ないが、高橋まつり氏が2015年12月25日に自殺して以降の電通に纏わる動きを軽くお復習いしておこう。

なお、電通においては1991年にも入社2年目の男性が過労によって自殺しており、表になっているのは高橋まつり氏で2人目となっている。

 

高橋まつり氏の自殺の一件が社会的に大きな話題となったのは、2016年9月30日に東京労働局三田労働基準監督署によってその自殺が労災認定されたことによる。

これについて、翌月となる10月7日に遺族代理人が本件を公表したことで、各種メディアが大きく取り上げる一大事件として認識されるに至った。

 

同月14日には東京労働局等が電通本社及び中部、関西、京都の3支社に立ち入り調査を行い、長時間労働が常態化しているのではないか徹底的に調べられることに。

20日には、時間外労働(残業)時間について、過少申告が求められるような状況があったことが各種メディアに取り上げられている。

28日になると、異例ともいえる速度での書類送検が発表。

電通の労働環境に対する違法性が明確に指摘されていることとなった。

 

なお、本件については広告代理店の雄である電通に配慮し、民放各社が及び腰になっているとの指摘もされていた。

そういった中、NHKが本件について積極的な報道をしただけでなく、特集番組を放送したことが高い評価を受けている。

しかし、この翌年となる2017年11月にNHKの記者が2013年に過労死していたこと、それのことを公表しないようにしていた実体が明らかとなったため、その評価は大きく翻されることとなった。

 

電通は、高橋まつり氏の過労による自殺の一件を受けて、厚労省によって与えられていた「子育てサポート企業」の認定を剥奪。2017年1月には、石井社長の辞任を発表した。

電通においては、本件を受けて抜本的な労働環境の改善を発表し、以降改善策の実施とその発表を定期的に行っている。

(電通の本件事件が報道されて以降、様々な企業での過労死等が表面化したが、労働環境の改善に関して継続的に公表している企業はそう多くない。また、行われたとしてもメディアが余り取り上げていない)

過労死者を出した電通の批判にこだわるのは本質を見誤る

 

高橋まつり氏の過労による自殺を受けて、電通に対する評価は地に落ちたと言っても良いだろう。

元々広告代理店の雄であり、実質的に二位以下が存在しないに等しい国内広告業トップシェアとして、黒い話の絶えなかった電通だが、本件を受けて世間の評価はブラック企業一色に染まった。

(当ブログでも便宜上用いることは多くなるが、筆者個人としては曖昧なだけで何ら定義できていない「ブラック企業」という呼称は好ましいものと思っていない)

 

電通=労働環境が最悪な企業というイメージが根強くなり、度重なる労働環境の改善についての発表を受けても、何かしら批判されることとなっている。

 

これについて、実体はどうかは分からないが、筆者個人の意見としてはその姿勢だけは評価されるべきだと考える。また、その施策の内容についても客観的な評価が行われるべき必要があるとも考える。

 

何故ならば、先程少し触れたように、電通同様に過労死者を出していながら、のんべんだらりとしている企業が少なくないからである。多くの人々が知っての通り、労基法違反に対する罰則は不相応に小さく、僅かばかりの罰金を支払っただけで何食わぬ顔をしている企業やその経営者は少なくない。

 

事件に大小はなく、死者を出した者への裁きは公平である。そのため、その後の態度如何で良し悪しや評価に違いをつけて比べるのもどうかと思うが、少なくとも死者を出しながらのんのんとしている企業よりは、まだ電通の方が真摯であり、改善に積極的だと考える。

 

電通は否定や批判を受けて当然のことをしたと思うが、こと改善に対する努力は、客観的に評価されて然るべきだろう。実体がどうかは分からない。未だに持ち帰り残業など過労の現実は変わっていないかもしれない。しかし、公に改善を示し、行動しているのだから、多少なりとも変化がないわけではないだろう。

 

大して何もせず、罪の意識もなく、のんべんだらりとしている人間が、メディアに余り取り上げられない、注目されないからといって否定や批判を受けず、一方で良くなろうと努力している電通が叩かれるのは、些か納得に欠けるものがあると言わざるを得ない。

 

これについては、電通を叩くなとは言わないが、他の過労死や過労による自殺者を出した企業に対して、もっと注目が集まるべきだろうとも考える。昨今の注目を集めることばかりに傾倒しているマスコミやメディアには無理かもしれない。個人では集められる情報に限界があるだろう。しかし、そういった悪人のその後に改めて意識を向けるのは必要なことだと考える。

過労死事件を受けて電通はどのように労働環境の改善しようとしてきたのか

 

なお、私個人として電通を擁護する気は一切無い。過労による自殺者を出したこと、法を犯したこと、長時間人を酷使したこと、どれ一つとっても褒められる点が無い。否定や批判を受けて当然だろう。

 

一方で、先程触れたように、改善させるための努力をしているにもかかわらず、それが公正に評価されないのは、電通のみの問題でなく、社会全体において雇用環境をより良いものにしていく上で問題を感じる。

 

そこで、電通がこれまで行ってきた労働環境の改善(働き方改革)を簡単にまとめおこうと思う。電通を良い会社だと思えとは一切思わないが、労働環境の改善手法にはこのようなものもあるという点で学びになるのは疑いようもない。

 

2016年12月28日

  • 22時以降の業務原則禁止・全館消灯(22時~翌5時)
  • 私事での在館禁止
  • 月間法定外45時間(月間所定外65時間)
  • 特別条項の上限30時間
  • 1日の三六協定時間順守の徹底
  • 新入社員の特別条項申請禁止
  • 啓発活動のためのツール制作
  • 社長執行役員を本部長とする「電通労働環境改革本部」発足

 

※出展:電通、本日付で「電通労働環境改革本部」を発足

 

2016年12月6日

  • 業務内容と業務プロセスの抜本的な見直し
  • 全社員の約1割に相当する650名規模の配置換えと異動
  • 全社労働時間の縮減と個人レベルの業務量の平準化、業務品質の維持を目指す
  • 各局に人材マネジメントを担当するマネジメント職(合計約70名)を配置
  • 第二新卒の採用強化、中途採用枠を大幅に増大
  • 「労務関連法規の理解徹底」を最優先の課題と位置づけ、役員以下全社員を対象とした研修・啓発活動実施

※出展:労働環境改善の取り組みについて

 

2016年12月9日

  • マネジメント職の評価に部下からの評価を取り入れる「360度評価」を2017年度から導入
  • 非マネジメント職の評価について、社員一人一人の成長・キャリア開発を重視した「中期的目標達成」を評価軸に導入を検討。そのための労使協議を2017年1月から開始
  • 各局単位での「有給休暇取得率50%以上」を目標とした組織管理指標を2017年度から導入
  • 電通からの発注業務による、制作会社などの従業員の深夜作業や長時間労働発生抑止に向け、新たな発注ルール・工程管理方法策定に向けた協力企業各位との協議を順次開始
  • 「鬼十則」を社員手帳等への掲載・掲出することの取りやめ

※出展:多様な価値観とワークライフバランスを大切にする新たな企業文化の創造に向けた取り組みについて

 

2016年12月22日

以下の施策を策定。尚、具体的な内容は出展元を参照(具体的な内容が非常に参考になる)。

  • コンプライアンス関連の意識・知見の拡充
  • 全社を対象とした業務平準化・要員再配置
  • 社員のモチベーションの維持・向上
  • 社員の健康管理・各種ケアの拡充
  • 働き方に関する選択肢の多様化
  • 労務管理の改善・徹底
  • マネジメントの拡充に向けた評価制度の全面改定
  • 社員の自律的成長支援

 

※出展:労働環境改革の進捗状況について

 

同12月22日

  • 保活コンシェルジュサービス導入
  • 契約保育施設の新規提携、増枠
  • 復職時面談
  • ベビーシッター利用料の補助
  • 女性活躍推進の社内ホームページを作成
  • 介護休業の分割取得
  • 介護のための時差・フレックス勤務の新設、時短勤務の期間延長
  • 介護相談窓口の設置
  • 介護ガイドブックと社内ホームページ作成

※出展:育児・介護施策の拡充について

 

2016年備考:労働基準法違反容疑による書類送検と再発防止に向けての当社の取り組みについて

 

2017年2月14日

労働環境改革に関する独立監督委員会

※出展:労働環境改革に関する「独立監督委員会」の設置について

 

2017年備考:当社の労働基準法違反に対する判決について

 

2018年2月13日

2018年末までに「改革に必要な環境・基盤整備」の完了を目指すことを発表。加えて、成果や経過を報告。

  • 労務管理の徹底と見守りの強化
  • 業務棚卸しによるワークダイエット
  • ワークスタイルのスマート化

尚、具体的な内容は出展元を参照(参考になる内容が書かれている)。

成果としては、以下の内容が方向されている。

  • 三六協定超過者が2017年4月以降0人(通年で見ても1月に時間管理への移行に伴う認識不足による超過者が発生、3月に1名超過者が発生したのみ)。
  • 管理職を含む社員1人あたりの総労働時間は2016年が2,166時間、2017年は目標値である2,100時間以下を達成。(参考:1日8時間、年間125日休暇として1,920時間)
  • 有給休暇取得率64.0%

※出展:当社が推進する労働環境改革について

2018年4月16日

  • 毎月第2・第3の水曜日か金曜日を休暇とする「インプットホリデー」を試験導入
  • 出社時に社員のコンディションを可視化する「バイタリティノート」導入
  • 「ひとりひとりの成長支援」を目標とした年間100時間以上の学びの機会を提供
  • コア業務集中を支援するノンコア業務代行CoE(Center of Excellence)サービス導入
  • 業務プロセスの可視化及びシステムによる一元管理
  • 在宅勤務/フレックス/インターバル制度導入
  • ITを含むオフィス設備の進化
  • 人事制度の見直し

※出展:当社が推進する労働環境改革の新たな施策について

 

実体はどうか分からないが、このように電通は労働環境の改善(働き方改革)に向けて、様々な施策を検討・実施し、成果もそれなりに出している。

 

また、各種施策は電通だからこそできるというものに限らず、中小企業等でも導入を検討、試験的に運用し本実装できるものも少なくないだろう。

 

電通が否定、批判されるのは当然だが、このような労働環境の改善に向けた取組までもが否定、批判されるのは明らかに可笑しな話である。否定や批判をする時間があるのであれば、翻って自社はどうだろうかと考えるべきだろう。

 

「就職四季報」によれば、電通は国内で平均年収9位(1,248万円)に位置する高収入が期待できる企業である。その代わりに命を削ると批判する人間もいるが、果たして命を削る程の労働時間を課しながら低賃金しか出せない企業はどれ程あるだろうか。

参考:最新!「平均年収が高い会社」ランキング300

 

ベンチャー企業やスタートアップと言われる企業、個人事業主による事業所、一般的な中小企業。酷使するだけ酷使しながら、これだけの給料が出せているだろうか?

 

昨今、働き方改革で注目される企業も増えたが、そういった企業は果たしてどれだけの給料が出せているだろうか。働き方改革を建前に低賃金で搾取している企業が少なくないのが現実なのではないか。

 

死んでしまっては元も子もない。それは間違いない。しかし、低所得が大きな問題となっている今の日本で、これだけの給料を支払いながら、それでいて労働環境の改善に多額の金を投じ、成果も出している企業はそう多くないだろう。

 

金を出せば良いという話ではない。犯した罪が消えるという話でもない。ただ、金も出しながら、積極的に労働環境の改善に取り組んでいる事実は事実として見るた方が良いという話である。

 

誰だって働くのであれば、労働環境がより良い形で整備され、しっかりとした金が貰える企業の方が良いだろう。電通だからといって闇雲に否定や批判をするのではなく、出すものを出し、労働環境の改善にも取り組んでいるという一面も見ても良いのでは無かろうか。

 

なお、この電通の労働環境の改善施策から大船渡市内の働かせ方において感じたこと、経営者が現状真っ先に考える必要がありそうなことは以下のリンク先で記した。興味があれば一読頂けるとありがたい。

電通の働き方改革から考える大船渡市の働かせる側に必要なもの

 




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復興庁「復興・創生インターン」はブラックインターンなのか?

労働者を違法な条件や環境で雇用するブラック企業が大きな問題として取り上げられることの増えた昨今、就職活動を控えた学生に対し、実際の職場や仕事を見学する機会や体験する機会を提供するインターンシップでもいくらか問題が発生している。

いわゆる「ブラックインターン」と呼ばれるもので、明らかに業務に従事させていながら賃金を支払わないケースや、やりがいなどを強調し、不当に低い労働条件で仕事をさせることなどが例としてあげられるだろう。

そういった中で、復興庁によって平成28年度・29年度(2016年~2018年)の2年に渡り実施された「復興・創生インターン」はどうなのか考えたい。

国家機関が主導する事業なのだから、法的に問題ないことが担保されている内容だとは思う。そもそも、何らかの訴えが起こされているものではなく、違法性が認められたものではない。とはいえ、全く疑義を感じない内容なのかといえばそうともいえないため、今回改めて考えてみたいと思う。

目次





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「復興・創生インターン」とは何か?

今回、個人的に問題視したのは、「復興支援インターン」ではなく、「復興・創生インターン」である。

本旨から外れるため、それぞれについて具体的な説明はしない。少なくとも今回の内容には関係ないため、ここでは、前者は被災地の企業と大学が連携して行うインターン、後者が被災地の企業で学生が個別に行うインターンといった程度の理解で良いと思われる。詳細に知りたくなった人は、一度調べてみて欲しい。

この取組自体は、被災によって大きな被害を受けた地域で仕事をする企業の現場を見聞きするという意味で、何かしらの価値があるものであるのは確かだろう。とりわけ学生の多くは就活において大手企業を志すことが多いだろうから、東北の被災地で事業を展開している中小企業の現場を見ておくのは、川下の現実を知るという意味で稀少な機会に違いない。

とはいえ、それは大学と地場企業が連携して行う「復興支援インターン」で十分なはずである。学生個人が1ヶ月以上の中期に渡り企業で独自プログラムとやらを受けることになる「復興・創生インターン」までは必要ないだろう。

「復興・創生インターン」は最低賃金が支払われたのか? そもそもどのような内容なのか

そもそも「復興・創生インターン」とは何か? 復興庁によれば、以下の目的があるという。

単なる就業体験に留まらず、被災地企業が抱えている経営課題に対し、経営者と協働して解決に取り組む実践型インターンシッププログラムであり、約1ヵ月間、学生同士、共同生活を送りながら就業体験を経験することにより、キャリア観の醸成や課題解決能力の向上を図ることを目的としています。

出展:平成 29 年度「復興・創生インターン」春期(平成 30 年2月~)の実施について

そして、そのために以下の内容が定められている。

  • インターンシップ期間:1ヵ月程度
  • 活動日:週4日以上、1日6時間以上

※相談可能

これに対して、復興庁側(※事業受託企業:株式会社パソナ)から、以下の支援が受けられるという内容である。

  • 自宅から就業場所に往復する分の旅費交通費
  • 宿泊費を不要とする。シェアハウスなどの宿泊場所の提供
  • 食事代等1日当たり850円の日当
  • インターンシップ保険加入
  • 事前研修、インターンシップ期間中の集合研修・カウンセリング、インターンシップ
    実施後のキャリアサポート等

肝心の企業側がどのような募集を行っていたかを示すホームページは、平成29年度(2017年)の事業終了を以て閉鎖されてしまった。

そのため、ここで閲覧してもらうことはできないが、内容として、以下のような内容が示されていた。
復興創生インターン
復興創生インターン

簡単にまとめると主に以下のような内容である。

  • 広報
  • 営業
  • リサーチ
  • コンテンツ作成
  • マーケティング

たとえば、企業によっては、具体的にこのような内容を提示しているところがあった。(あくまで「復興・創生インターン」事業に参加しただけの当該企業を非難する意図は全くない)

復興創生インターン

明白に勤務と書いており、その内容もインターンシップというよりは、まるで専門のコンサルタントに依頼でもしているかのような内容である。

これらはあくまで一例に過ぎない。ここまでの内容を読む限り、「日当850円で、企業の経営改善を手伝わされている」と感じる人は少なくないのではなかろうか。

実態は定かでないが、外形的には被災地支援ややりがい、稀少な経験を謳った学生搾取にも見えなくない。この事業に関わった全ての企業が同様の内容だとは思わないが、その要項は客観的に見て職業教育の一環としてインターンシップの枠を超えているようにも見える。

少なくとも、果たして最低賃金が補償されていないのは適切なのか個人的に疑義を感じざるをえない。一方で、記述は業務に見えても、実際はまるっきり学習であった可能性もゼロではない。その場合は、明白に業務ではなくインターンシップの範疇だろう。

なお、募集要項は既にサイトが閉鎖されてしまったため見られないが、実際にどのような内容が行われたかなどは、Facebookなどで発信されているケースもあるため、興味があれば一度確認してみて欲しい。

ちなみに、私は確認を目的として、独自にこの「復興・創生インターン」事業を受託した株式会社パソナの担当者に対し、真実賃金が支払われていないのか確認している。その内容に関しては、以下のリンク先を参照して欲しい。

1ヶ月以上滞在する復興・創生インターンに賃金は支払われたのか?

結論をいえば、賃金は支払われていないとのことである。どのような見解に基づいてそういった結論になっているかは、リンク先を参照して欲しい。株式会社パソナは国内の人材業界でも大手である。その大手が、インターンとはいえ危ない橋を渡るとは到底思えない。

そのため、本案件が労働者性を伴わない適法な内容なのだと推察するよりない。一方で、どのような経緯でこの事業が受託、運営されたのかは分からないが、個人的には元々復興庁から示されている予算が、最低賃金さえ織り込んだものではなかったのではないかと推察もする。そうだとすれば、パソナ側としては今回のような回答をするよりなかったのではないかとも感じられる。

「復興・創生インターン」がブラックインターンかは議論はあるだろうが改善すべき点はある

就活やそれに向けたインターンに大きな時間を割かれる学生にとって、およそ1ヶ月という期間は、決して無駄にはできない貴重な時間だろう。まして、昨今は奨学金の返済に苦慮する人々が大きな問題として話題になるなど、収入面でも苦労している学生は少なくないことが想像される。およそ1ヶ月という自由に使える時間があれば、それこそ東京などの都市部であれば10万円以上の金を容易に稼ぐことができるはずだ。

それだけの時間を企業の経営課題の解決などに費やしながら、報酬が得られない「復興・創生インターン」は、一体どれだけの価値を持つのだろうか。そこに妥当性はあるのだろうか。今後も実施されるのかは分からないが、仮に実施されるのであれば、その内容に対して適切な報酬が得られる設計はすべきではないかと私は考える。

そもそも学生時代の貴重な時間を使わせるという点について、真剣に考える必要があるだろう。本人たちが自ら志願しているのだから、何をやらせても良いという考えはあってならない。まして、本案件は異なるのかもしれないが、そういった学生の気持ちを利用してただ働きをさせるようなことが起こるのは、絶対にし避けなければならない。

「復興・創生インターン」に参加する学生に労働者性が認められるかどうか、この点に対して議論はあるだろう。一方で、少なくとも厚労省が提示している以下の点を鑑みれば、労働者性が全くないともいえないように感じられる。

  • 見学や体験的な要素が少ない。
  • 使用者から業務に関わる指揮命令をうけている。
  • 学生が直接の生産活動に従事し、それによる利益・効果が当該事業所に帰属する。
  • 学生に対して、実態として何らかの報酬が支払われている。

出展:インターンシップ受け入れにあたって

過去実施された「復興・創生インターン」を体験した学生の反応や感想をメディア等を通して見るに、特別不満もなく、達成感に溢れた姿が見られる。それは非常に喜ばしいことである。しかし、そういった反応に甘んじて労働法制を軽視するようなことは絶対にあってはならない。本人達が満足しているのだから、払うものを払わなくても良いという道理はない。

本件は少なくとも訴訟などが行われ、違法であることが指摘されたものではない。現実にインターンシップにおいて違法が指摘された案件とは異なる。そのため、少なくとも直ちにブラックインターンと呼べるものではないだろう。

一方、もし今後も実施されるのであれば、このようないくらかでも適切なのか疑われるような内容ではなく、客観的明白に適切だと認められるような内容になるよう改善して欲しいものである。何より、学生の時間を大人の都合で浪費させるようなことがあってはならない。




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