3つの日本郵便事件とパートタイム・有期雇用労働法の内容

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昨今、有期雇用(期限のある雇用契約・雇用形態)で働いている人を巡り、「正社員と同じ仕事をしているのに、自分の給料や待遇が正社員よりも悪い」といったトラブルが多く話題になっている。

有期雇用、いわゆる非正規雇用で働く人にとってはよくある話である。しかし同一労働同一賃金に対する意識の高まりや非正規雇用者の待遇改善を背景として、これらの問題に対して救済措置が取られることも少なくなくなってきた。

そこで今回、2017年から2018年にかけて、非正規雇用者と正規雇用者の待遇差が取り沙汰された、日本郵便株式会社に関する裁判例などを元に、どのような見解が出されたのかを見ていこうと思う。

また、併せて新たに施行されるパートタイム・有期雇用労働法についても紹介する。「同一労働同一賃金」を志向し、有期雇用者と無期雇用者との間の不合理な待遇差を解消するための法律である。

特にパートタイム雇用者・有期雇用雇用者を雇用する使用者や派遣労働者の受入を行っている事業所にとって大きな変更になるため、ぜひ確認しておいて欲しい。

※一部最新の情報に対応できていません。追って加筆・修正いたします。(2019/01/24時点)

目次



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「同一労働同一賃金」が話題となる中で判決が下った3つの日本郵便事件

数年前に「ブラック企業」と呼ばれる企業やそこでの働き方が問題視されてからというもの、違法な労働に対する目が厳しくなり、雇用条件や働き方に対する労使紛争が注目される機会が増えている。

特に過労死の原因ともなる長時間労働に関する目は厳しくなり、2019年には臨時的に時間外労働の上限(月45時間・年360時間)を超えて労働させられる「特例条項」に基づく時間外労働にも一定の制限が課せられることとなった。

※参考:時間外労働の上限規制わかりやすい解説-厚生労働省

その一方で、非正規雇用者と正規雇用者の待遇差にも関心が集まり、「同一労働同一賃金」の名の下に法改正も含めた抜本的な労働法制の改革が進められているところである。

日本郵便株式会社を巡る労使紛争は、まさにそういった過渡期とも言える現在の環境下で発生したものであり、だからこそ大きな注目を集めた。中でも次の3件は、マスコミ・メディア各社で取り上げられる程話題となり、その判決は今後同様の事案が発生した際の判断基準の一つとして多方面で検証されている。

  • 日本郵便事件(東京地裁判決 H29.9.14)
  • 日本郵便事件(大阪地裁判決 H30.2.21)
  • 日本郵便(佐賀)事件(福岡高裁 H30.5.24)

では、まずはこれらの事案がどういったものであったかを簡単に説明しよう。

※尚、あくまで事案内容を紹介するのであって、法律解釈及びそれに類する事は行わない。

非正規雇用者と正規雇用者の待遇差のに一石を投じた3つの日本郵便事件

2017年~2018年にかけて日本郵便株式会社の雇用を巡って争われた事案は、まさに同一労働同一賃金や非正規雇用者の雇用について考えさせられるものであった。ここでは、それがどういった事案であったのかを見ていこう。

日本郵便事件(東京地裁判決 H29.9.14)

日本郵便株式会社に勤務する非正規雇用者3名が、正規雇用者(正社員)との待遇の違いを争った事案である。この事案では、正規雇用者に支払われる年末年始勤務手当及び住居手当、その他各種手当が非正規雇用者に支払われないのは不合理だという点が争われた。

判決としては、非正規雇用者に年末年始勤務手当及び住居手当が支払われないのは違法であるとして、一定額の支払いを求める判決が下されている。このとき、併せて特別休暇や罹病時の有給休暇が無い点も不合理と認められた。一方で夏期年末手当や早出勤務手当等の各種手当の不支給は違法でないとされ、且つ将来に渡る正社員と同等の地位確認も認められていない。

結果として、正規雇用者と非正規雇用者の待遇差に関して定められた「労働契約法20条パートタイム労働法8条・9条(後のパートタイム・有期雇用労働法)」に纏わる、何を以て合理的とするのか? どのような点で差を付けられるか? といったの疑問に一定程度の解を示す判決にもなっている。

参考:東社会保険労務士事務所(千代田区飯田橋)

※その後東京高裁判決が新たに出ています。(いずれ加筆します)

日本郵便事件(大阪地裁判決 H30.2.21)

先程の事案同様、此方も非正規雇用者と正規雇用者の待遇差に関して争われた事案です。判決としては、原告が不合理だと訴えた各種手当や待遇の内、以下のものについて不合理が認められ、被告である日本郵便株式会社に対して一定額の支払いが命じられました。

  • 年末年始勤務手当
  • 住居手当(但し、新一般職という職位との比較において)
  • 扶養手当

この裁判については、判決こそ東京地裁判決と大きな差異が生じなかったものの、労働契約法20条が定める不合理な差異に関して、判断の枠組みや考慮要素等をより詳細にした点で注目が集まっています。

また、本判決によって示された労働契約法20条の解釈は、後に行われたハマキョウレックス事件(最高裁第二小法廷 H30.6.1)の判決において支持されたこともあり、以降の同様の裁判においても重要な意味を持つことになりました。

参考:近時の労働判例

※その後高裁判決が出ています(後で加筆します)

日本郵便(佐賀)事件(福岡高裁 H30.5.24)

先の2件同様、非正規雇用者と正規雇用者との待遇差が問題となった事案である。この裁判でも先の2件同様に各種手当について、非正規雇用者と正規雇用者との差異が合理的かどうかが争われました。

判決としては、特別休暇(夏期休暇・冬期休暇)の有無の差異が不合理とされ、その他の各種手当(早出勤務手当等)の差異は不合理でないとされました。

結果的に先の2件と同様の判決が下された一方で、新たに特別休暇の有無について非正規雇用者と正規雇用者で差異があることは不合理とされた点が注目されています。

参考:栗坊日記-弁護士法人栗田勇法律事務所

日本郵便事件で示された労働契約法20条違反の考慮要素

日本郵便株式会社の非正規雇用者と正規雇用者の差異を巡って争われた裁判では、後のハマキョウレックス事件の判決に繋がる労働契約法20条の解釈が得られている。

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
出典:労働契約法-電子政府の総合窓口e-Gov

それはつまり労働契約法20条が禁ずる「不合理な差異」とは何か? という点についてである(尚、あくまで定められているのは有期雇用者と無期雇用者の差異であって、所謂非正規雇用者と正規雇用者の差異とは言い難い点については留意が必要)。

特に後のハマキョウレックス事件において示された、労働契約法20条の違法性を考慮する要素として、①職務内容、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲(人事制度の仕組み等)、③その他の事情の三点が示されたのは、今後重要な意味を持つのは想像に難くない。

何故ならば、これまで漠然と有期雇用者と無期雇用者の間で不合理な差異があってはならないと意識されていたところ、それがどのような基準で不合理と扱われるかが明らかになったためだ。

例えば大阪地裁判決において、扶養手当の有無が有期雇用者と無期雇用者で異なるのは不合理とされました。これは、①扶養手当が生活保障としての性質を持つ点、②勤務内容に関係なく一定額支給され、且つ職務内容等の違いで支給の必要性が大きく変わらない点、③扶養手当と趣旨を同じくする手当が有期雇用者には支払われていない点の三点を判断基準として下された判決と見られている。

参考:ビジネスガイド(2018.6)

この判決はあくまで日本郵便株式会社の扶養手当について下された判決ではあるが、ハマキョウレックス事件の判決にも見られる通り、今後同様の手当の差異があれば、同じく違法とされる可能性が生じる。

※その後の高裁判決により扶養手当の不合理性については否定されました(後で加筆します)

つまり多くの事業所でも、従来与えていた手当について、仮に有期雇用者と無期雇用者で差異を設けていた場合に、同様の欠陥があったならば違法性を突きつけられる可能性があるのだ。

そして、違法性を回避するためには、本件及びハマキョウレックス事件等の事案の詳細を理解し、改めて各種手当やその支給について見直す必要性がある。

ところで、この判決が出された後、日本郵便株式会社にどのような変化が生じたかも見ていこう。

日本郵便事件後に行われた日本郵便の手当見直しの内容

大阪地裁判決を受けてかどうかは定かでないが、日本郵便株式会社では手当等の見直しが行われている。

既存の制度がいろいろありますが、それらについては社会経済環境の変化等もございますので、絶えず見直しを行っていこうと思っており、今般、正社員の住居手当を一部見直したというのが事実でございます。
 ご指摘のあった住居手当ですが、転居転勤に伴う住宅費負担の補助というのがそもそもの趣旨でございまして、転居転勤のない一般職社員は住宅費の負担の度合いが小さいと感じておりますし、一般職の住居手当受給者というのは限られているというのが私どものリサーチで判明いたしましたので、この手当については廃止をしようとしたもの
引用:2018年4月24日火曜日 日本郵政株式会社 社長会見の内容

内容としては住居手当の一部見直しや非正規雇用者及び正規雇用者の賞与引き上げ、一般職・地域基幹職の初任給引き上げ等が盛り込まれた。これに併せ、東京地裁判決及び大阪地裁判決で有期雇用者と無期雇用者間の差異が違法とされていた年始勤務手当が、有期雇用者に対して新設されている。

この変更により、日本郵便株式会社ではグループ全体で凡そ320億円程度人件費が増加するとしており、雇用者の待遇改善に多くの資金を投入した形となった。

とはいえ、正規雇用者の住居手当廃止は、非正規雇用者と正規雇用者の待遇差の是正のために正規雇用者の待遇を下げたと揶揄され、メディアでも取り上げられることとなり、改善を図ったものの第三者に対する良い印象は与えられなかったように感じられる。

参考:「日本郵政の手当廃止」が示す”正社員”の未来 「同一労働同一賃金」で既得権にメスが入った-東洋経済ONLINE

最後に今後有期雇用者と無期雇用者の待遇差を考える上で重要となる「パートタイム・有期雇用労働法」について見ていこう。

有期雇用者と無期雇用者の不合理な格差を禁ずる「パートタイム・有期雇用労働法」の内容とは

パートタイム・有期雇用労働法とは、これまでのパートタイム労働法の対象に有期雇用者を含めたもので、2020年4月1日から適用される法律。尚、正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」である。

※中小企業への適用については2021年4月1日から。

働き方改革関連法案の成立に伴って定まった法であり、同一労働同一賃金の考えの下、①不合理な待遇差のなくすための規定整備、②労働者に対する待遇に関する説明義務強化、③行政による事業主への助言・指導や裁判外紛争解決手続(ADR)の規定整備といった内容が盛り込まれている。

参考:パートタイム労働者の雇用管理の改善のために-厚生労働省

尚、関連する省令等具体的な内容は順次定められていくとされている。一方で、資料として各企業にどのような対応が求められるかが発表されている。

参考:改正後のパートタイム・有期雇用労働法で求められる企業の対応について

資料では、各手当について過去に待遇差が不合理として扱われた事例を掲載している外、均衡待遇規定に関するQ&Aが掲載されている。今後社内の規定を見直す際、或いは自分の今の待遇と他の社員の待遇差に疑問を持ったとき等、多くの人にとって参考になる情報といえる。

また、パートタイム・有期雇用労働法の主要なポイントである、①不合理な待遇差のなくすための規定整備、②労働者に対する待遇に関する説明義務強化、③行政による事業主への助言・指導や裁判外紛争解決手続(ADR)の規定整備のそれぞれについて、具体的にどのような内容が示されるのかを簡潔に解説している。どのようなものかは以下の通りである。

①不合理な待遇差のなくすための規定整備

日本郵便事件でも焦点になっていた有期雇用者と無期雇用者の不合理な待遇差。パートタイム・有期雇用労働法ではこれを是正するため、裁判の際の判断基準となる「均衡待遇規定」及び「均等待遇規定」が定められる。

「均衡待遇規定」の内容 ①職務内容※、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情 を考慮して不合理な待遇差を禁止
「均等待遇規定」の内容 ①職務内容※ 、②職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は差別的取扱い禁止
※ 職務内容とは、業務の内容+責任の程度をいいます。
出典:改正後のパートタイム・有期雇用労働法で求められる企業の対応について

「均衡待遇規定」は、まさにハマキョウレックス事件等で示された労働契約法20条違反かどうかの考慮要素として検討されたものといえるだろう。

「均等待遇規定」では、より具体的な面について考慮しており、職務内容や配置等が同じ場合における待遇差を不合理とするような内容を示唆している。

ちなみにここでいう職務内容とは、業務の内容だけでなく、与えられる責任の程度がどれ程かを加味するとしている。これは例えば、行政における正職員と非正規職員の違いが分かりやすいかもしれない。

業務内容だけに焦点を当てれば、同じフロアで似たような業務を行っている事になるため、彼らの違いは余り感じられない。しかし、行っている業務に対する責任の程度はかけ離れているのが実情である。

その様な二者の待遇を全く同じしなければならないとすれば、それこそ不合理というものだ。責任の程度も加味した上で合理性を判断するのは妥当といえるだろう。

また、この規定では派遣社員についても不合理な待遇差が生じない様に規定しており、これまで派遣社員には認められていなかった「均等待遇規定」及び「均等待遇規定」が規定されることとなった。

以下のいずれかを確保することを義務化。(前ページの表➍)
(1)派遣先の労働者との均等・均衡待遇
(2)一定の要件を満たす労使協定による待遇
※ 併せて、派遣先になろうとする事業主に対し、派遣先労働者の待遇に関する派遣元への情報提供義務を新設します。
○ 派遣先事業主に、派遣元事業主が上記⑴⑵を順守できるよう
派遣料金の額の配慮義務を創設。
○ 均等・均衡待遇規定の解釈の明確化のため、ガイドライン
(指針)を策定。(前ページの表➎)
出典:改正後のパートタイム・有期雇用労働法で求められる企業の対応について

派遣の場合、雇用先と就業先が異なるため、「均衡待遇規定」や「均等待遇規定」を適用するにも、一体全体何を基準とすれば良いのか分かり難い特徴がある。今回、パートタイム・有期雇用労働法策定にあたり、派遣労働者に関しては派遣先の待遇を基準とするか一定の労使協定による待遇を確保するかのどちらかが義務づけられることになった。

併せて、派遣先事業主には派遣元に自社の待遇を知らせる規定に加え、派遣料金についても派遣先の労働者との不合理な待遇差が生じないような額を支払うよう配慮すべき規定が新設されている。つまりこれによって、派遣社員だから派遣先の従業員と大きな待遇差がつくといった状況の改善が図られることとなる。

また、これらに関してガイドラインの策定が予定されている。ガイドラインの案としては、資料にある通り、基本給や賞与といった賃金に係る内容はもちろん、教育や福利厚生などについても「均等待遇規定」や「均等待遇規定」の考え方が適用されるよう検討されている。

最終的にどうなるかは定かでないが、多くの企業で抜本的な人事制度の見直しが必要になる可能性が高く、今後の動向を注視する必要があるのは間違いないだろう。

②労働者に対する待遇に関する説明義務強化

次に待遇に関する説明義務の強化である。現状でも労働条件の明示は労働基準法第15条によって義務づけられているが、パートタイム・有期雇用労働法ではより具体的に明示すべき内容が規定されることとなった。

<雇入れ時>【フルタイムの有期雇用労働者については新設】
パートタイム労働者・有期雇用労働者を雇い入れたときは、本人の待遇の内容、待遇の決定に際しての考慮事項について事業主は説明しなければなりません。
<パートタイム労働者・有期雇用労働者から求めがあった場合>【新設】
パートタイム労働者・有期雇用労働者から求めがあったときは、正社員(無期雇用フルタイム労働者)との待遇差の内容・理由等について事業主は説明しなければなりません。
<不利益取扱いの禁止>【指針→法律に格上げ】
事業主は、説明を求めた労働者について、不利益取扱いをしてはいけません。
出典:改正後のパートタイム・有期雇用労働法で求められる企業の対応について 

簡単にいえば、有期雇用者等に対して、その待遇の内容だけでなく、何故その待遇なのかの理由や待遇を決める根拠等について説明する義務が設けられたのである。

現状でも自身の労働条件や待遇について、何を以て決定されているのか分からなかった人は多いだろう。特に有期雇用者の様な立場が不安定な者は、自身の評価の悪化を恐れて訊くに訊けない状況もあった筈だ。

今回新たに設けられるパートタイム・有期雇用労働法の規定では、その「何故?」に使用者が答える義務と、訊いたからといって不利益な条件変更等をしてはならないことが定められることになったのである。

そのため、これまでブラックボックス化して分からないままだった評価の部分を、より簡単に知られるようになる。一方で、新たにパートタイム労働者・有期雇用労働者を雇用する側は、新たに説明義務が法定されることから、説明し忘れて違法な雇用を行ってしまわないよう注意する必要がある。

③行政による事業主への助言・指導や裁判外紛争解決手続(ADR)の規定整備

今回のパートタイム・有期雇用労働法の新設に併せて、裁判によらない紛争解決手段も拡充される。

● パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者の均等・均衡待遇等に関する個別労使紛争については、各都道府県労働局の紛争調整委員会で「調停」ができます。(無料・非公開)
★ 弁護士や大学教授、家庭裁判所家事調停委員、社会保険労務士などの労働問題の専門家が調停委員となり、高い専門性、公平性、中立性のもとで紛争の解決を図ります。
★「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、「調停」の対象となります。
出典:改正後のパートタイム・有期雇用労働法で求められる企業の対応について 

どれだけパートタイム・有期雇用労働法で不合理な待遇差が禁止される制度が整ったところで、現実に守られないのでは意味がない。しかし違法な労働を強いる使用者を裁こうとしても、裁判をするとなれば時間も費用もかかってしまう。

そうなると多くの労働者は、手間暇をかけて不合理な条件を改善しようとするよりも、泣き寝入りすることを選びかねない。第一、違法な労働を強いる様な企業はそもそも賃金や待遇が劣悪であり、訴える利益よりも損失の方が大きくなることも珍しくないだろう。

しかしそのような状況が蔓延るようでは、新たに法を作る意味がなくなってしまう。もっといえば法が存在する価値すらなくなりかねない。そこで誰でも簡便に「均衡待遇規定」や「均等待遇規定」が守られない状態の改善を図れるよう、制度が拡充されている。

これによって、これまでなかった有期雇用者に関する行政による助言・指導等やパートタイム労働者・有期雇用者・派遣労働者に関する行政ADRが規定されることとなった。

よって、パートタイム・有期雇用労働法施行後は、「均衡待遇規定」や「均等待遇規定」が守られない場合も、行政ADRなどによって紛争解決を求められるようになる。つまり、今まで以上に自身の不合理な待遇の改善を訴え是正しやすくなるのだ。

幸福な労働環境を作るのはパートタイム・有期雇用労働法ではない

日本郵便事件から新たに施行されるパートタイム・有期雇用労働法までを紹介した。これらは、いわば「同一労働同一賃金」を巡る争いであり、非正規雇用者と正規雇用者の間にある不合理な待遇差を是正しようという社会の動きが形になったものである。

この動きが今後どのようなところに行き着くのかは定かでないが、少なくとも新たな法が施行される以上、適法な雇用を行う為に使用者は自社の雇用内容・労働条件を見なさなければならないのは明らかである。

また有期雇用者として働く側も、自身が不合理な労働条件で労働させられないように、最低限の知識として覚えておく必要があるだろう。権利の上に眠る者を法は助けない。自身の身は自身で守る努力をしなければならないのである。そのためにも自身の仕事に関係ないからといって、法の学習や情報収集を怠らないようにすべきだろう。ひいてはそれが、自身にとってより幸福な労働環境を作り出すことに繋がるのである。


 
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